リエージュ~バストーニュ~リエージュ-Review

春を締めくくる“ドワイエンヌ”。

アルデンヌクラシック第3戦にして、最も歴史と格式の高さを誇るリエージュ~バストーニュ~リエージュの今年のレースは、その由緒にふさわしいレースとなりました。

歴史的大逆転が生まれた今回のレースを振り返りましょう。

 

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リエージュ~バストーニュ~リエージュ(Liège~Ans、257.5km)-4月22日

 

【結果】

1.マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ) 6:43:52

2.ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +21″

3.エンリコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ) +36″

4.トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) +36″

5.ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ) +36″

6.バウク・モレッマ(オランダ、ラボバンク) +36″

7.サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ) +36″

8.ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +36″

9.ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +36″

10.イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル) +36″

 

フルリザルト(公式サイト)

 

一時13分近くタイム差を稼いだ逃げ集団に対し、追走ムードが強まり始めたのは残り100kmを前に。

メイン集団がスピードを上げると、タイム差は一気に縮まり始めます。

追走気運が高まる中、残り85kmのCôte de la Haute-Levéeでローラン、キリエンカ、ルレイの3人がアタック。

この3人は残り72kmで迎えるCol du Rosierで逃げメンバーに合流。

 

ロットやカチューシャが中心となって牽引していたメイン集団は、最初の勝負どころでもあるCôte de La RedouteでBMCが主導権を奪取しペースを引き上げます。

集団後方では優勝候補の1人・バルベルデにメカトラが発生、すぐさまアシストのバイクに跨るもペースの上がった集団からは脱落を余儀なくされます。

この動きで集団は一気に30名弱に。

 

最後から2番目の登坂区間Côte de La Roche aux Fauconsを前に、逃げていた選手たちは全員吸収。

そしてこの上りでニバリがアタック。

ここは2連覇を狙う優勝候補筆頭ジルベール、好調ファネンデルトらがしっかりとチェック。

しかし頂上通過と同時にペースが緩んだ隙を突いて、再度ニバリがアタック。

このアタックに他の選手たちは誰が追うかでお見合い状態に。

プロトン屈指のダウンヒラーであるニバリ相手に、有力選手たちは一気に劣勢に立たされます。

 

追うべき集団はアタックとお見合い、集団分裂と一体化の繰り返し。

順調に走るニバリとの差は46秒にまで広がります。

 

最後の難関Côte de Saint-Nicolasを前に、メイン集団ではイグリンスキーとロドリゲスが抜け出すことに成功。

これに追随すべくマーティンとローランも集団から抜け出し、前の2人を追います。

そして、Côte de Saint-Nicolasでイグリンスキーがロドリゲスを突き放し、ニバリへの追撃態勢を強めます。

快調に見えたニバリの脚は急激に止まり始め、残り2kmでイグリンスキーとの差は11秒。

 

ゴールに向かう上りでもがくニバリと、俄然ペースを上げるイグリンスキーとの状態の差は明らか。

残り1kmのフラムルージュを前に追い付いたイグリンスキーは、一度二度ニバリの様子に目をやって渾身のアタック。

脚が売り切れたニバリは追うことができず。

 

残り500mの左カーブで勝利を確信したイグリンスキーはガッツポーズ。

ゴールまでのウイニングランを何度もガッツポーズで飾り、カザフスタン選手としては2回優勝のヴィノクロフに次ぐ3回目の栄冠に。

 

ゴールまであと1kmというところまで逃げ続けたニバリは、最終的に21秒差を付けられ肩を落としながらゴール。

1人また1人と選手を削っていきながらゴールを目指した追走グループは、結局3位争いのスプリント。

先のアムステル・ゴールドレースを制したガスパロットが先頭でゴールし、アスタナが1・3フィニッシュ。

 

ここへきて復調の兆しを見せ、優勝候補筆頭に挙げられていたジルベールは自ら勝負に出ることができないまま、最後の登坂区間Côte de Saint-Nicolasで追走集団からも脱落。

最終的に1分27秒遅れの16位でゴール。

また、一時はイグリンスキーとともに追走態勢をとったロドリゲスも失速。

こちらも1分遅れの15位でレースを終えています。

 

【優勝予想アンケート結果】

4/20~22に実施した優勝予想アンケートの結果(得票数27、小数点以下四捨五入)

 

フィリップ・ジルベール 33%

ダミアーノ・クネゴ 19%

フレフ・ファンアーヴェルマート 7%

ホアキン・ロドリゲス 7%

イェーレ・ファネンデルト 7%

アンディ・シュレク 4%

エンリコ・ガスパロット 4%

ミハエル・アルバジーニ 4%

アレハンドロ・バルベルデ 4%

サムエル・サンチェス 4%

ヴィンチェンツォ・ニバリ 4%

Other 4%

 

ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。

今後は、5月のジロ・デ・イタリアにて何かできないか企画中…。

その際は、またご協力いただけますと幸いです。

 

【戦評】

レースを追うごとに内容が良くなっていたジルベールを軸に展開されると予想された今回のレース。

本ブログ予想アンケートでもジルベール票が多かったことが、それを物語っていたとも言えるでしょう。

しかし、蓋を開けてみれば誰もが想像していなかった展開となりました。

 

2010年にはモンテパスキ・ストラーデビアンケ(現ストラーデビアンケ)で優勝、その年のクラシックでは優勝候補にも挙げられたイグリンスキー。

2年経ち経験値と勝負勘を身に付け、ついにこの時を迎えました。

勝因としては、実力や絶好調のチーム力はもちろん、自分の脚を信じて勝負に行ったメンタル面が大きかったのではないでしょうか。

先のアムステルでは優勝したガスパロットを、フレーシュ・ワロンヌでは5位に入ったキセロフスキーのサポート役に回っており、このレースでも終盤で追走集団から抜け出した際に一緒に抜け出したロドリゲスを抑えるべくローテーションしない選択もあったはず。

後ろに控えたガスパロットやキセロフスキーを待つことなく、自ら攻めた結果がこの勝利に表れたと言えそう。

Côte de La Roche aux Fauconsでニバリの動きに合わせるのではなく、最後まで自分のタイミングで行くことを貫いた判断も奏功しました。

これまで“北のクラシック”で力を発揮するイメージが強かった選手ですが、この勝利でクラシックハンターとしてはトップクラスの1人として誰もが認める存在になりました。

 

前述したように、これまでとは見違えるほどのアスタナのチーム力も見逃せません。

かつてのように、ヴィノクロフ・コンタドール・アームストロングといったスーパーエース頼りのチームづくりではなくなったことが、かえって所属選手たちの勝負姿勢に表れているのではないでしょうか。

今年のクラシックを通して、集団をコントロールするというよりは中盤で誰かがアタックをしてエースの負担を軽くする動きが目立っていました。

ワンデー、ステージともに勝負できる選手が育ち、今後はプロトンをまとめるチームとしての役割を求められることでしょう。

 

悔やんでも悔やみきれないのは、2位に終わったニバリ。

しかし、上りでアタックし、下りで他の選手を突き放し、持ち前の独走力でゴールを目指す展開は、この日で言えば唯一の勝ちパターンだったはず。

そう考えれば、やるべきことはやりつくしたとも捉えることができるか。

ただ、勝負のタイミングが最後の登坂区間であるCôte de Saint-Nicolasであれば、また違った結果になっていたかもしれません。

 

最終的に16位と惨敗のジルベール。

去年が絶好調だったとはいえ、本来の状態からも程遠かったというのが実際のところでしょう。

決して良いとは言えない現状で勝つには、やはり勝負どころでのアシストの駒数が足りなかったのが敗因の1つか。

とはいえ、有力選手だけに絞られた局面で力を発揮できなかった点で、ジルベール本人の状態改善が必要なのは明白。

休養を経て、地元リエージュがグランデパールとなるツールまでには復調したい。

 

本ブログ予想アンケートでジルベールに次いで人気の高かったクネゴは、ピーキングがズレた印象。

落車するまでは動きの良かったアムステル後、険しい山岳ステージがいくつも設定されたジロ・デル・トレンティーノに出場。

そこでステージ1勝を挙げたものの、脚を使いすぎた可能性は否めません。

一方で、トレンティーノでは鳴りを潜めていたスカルポーニが代わってこの日は8位入線。

ランプレのエース2人にとっては、レーススケジュールの明暗がくっきり分かれた格好。

 

アルデンヌクラシック全体を通して、高いレベルで安定していた選手たちがこのレースでも上位に名を連ねました。

今回もトップ10入りしたマーティン、モレッマ、ファネンデルトらは、来年以降にも期待のかかる若手有望株として押さえておきたいところです。

逆に、バルベルデやシュレク兄弟は期待外れな結果に。

 

日本人選手2名はともに途中リタイア。

別府選手は2日後に控えるツール・ド・ロマンディ、そしてシーズン前半の目標であるジロ・デ・イタリアを見据え、このリタイアは想定内といったところか。

また、土井選手も1週間後の全日本選手権を前に、一仕事終え無理せずバイクを降りたと見て良さそうです。

 

リエージュ~バストーニュ~リエージュオフィシャルサイト

http://www.letour.fr/indexLBL_fr.html

 

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